最近はどのハウスメーカーも断熱性能の高さをウリにしているので、「結局何が違うの?」と考えることはありませんか。不思議に思い、いろいろと検索をすると「付加断熱」にたどり付きます。
あまり聞いたことが無い言葉かもしれませんが、ハウスメーカーでは「ダブル断熱」や「W断熱」、「ハイブリッド断熱」や「内外ダブル断熱」などいろいろな言い方をしている断熱工法です。
「付加断熱」と聞いてもあまりピンとこないのは、ハウスメーカーが言い方を変えているだけで、どれも「付加断熱工法」を示しています。ハウスメーカーごとの断熱性能を比較するときは、「付加断熱」に詳しくなっておくことが必要です。
そこで今回は「付加断熱とは?メリット&デメリット10選と費用の話」をします。断熱性能で悩まれている人は参考にしてください。
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目次
付加断熱とは?
付加断熱とは、木造住宅で利用される「充填断熱工法」と「外張り断熱工法」の2つを掛け合わせた工法のことです。
2つの工法を合わせることでメリットが増え、デメリットを補います。ハウスメーカーが「ダブル断熱」「W断熱」「ハイブリッド断熱」「内外ダブル断熱」などと名付ける理由は、2つの融合が理由です。
改めて、断熱工法の種類を確認しておきましょう。
- 充填断熱工法(内断熱)
- 外張り断熱工法(外断熱)
- 付加断熱
注文住宅でメーカーが利用する工法は上記3つのいずれかです。
充填断熱工法(内断熱)
充填断熱工法は、壁や天井の中に断熱材を充填する工法です。3つの中では一番費用が安く、断熱材の厚さが取りやすいので断熱性能が上げやすいなどのメリットがあります。デメリットは壁内結露が起きやすいこと、断熱欠損も起きやすく気密性の維持が難しい工法です。
外張り断熱工法(外断熱)
外張り断熱工法は、柱の外側から家全体を包んで断熱をする工法です。ヒートブリッジ(熱が逃げること)を抑え、壁内結露が起きにくく気密性の維持ができるなどのメリットがあります。デメリットは費用が高く、断熱材の厚さが限られてしまうことです。
付加断熱
付加断熱は施工場所が違う2つの工法を合わせた欲張りな工法、メリットを増やしデメリットを補います。3つの工法のなかで一番おすすめなのは言うまでもありません。
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付加断熱の費用
2つを合わせるのならば費用が上がるのでは?と不安になるのは当然です。
しかし、すごく費用が高くなるというわけではありません。さらに付け加えると、外張り断熱工法よりは安く仕上がります。安い「充填断熱工法」と、高い「外張り断熱工法」を足して2で割った金額よりも少し安いくらいの費用です。
40坪程度の注文住宅に採用する場合の費用は「100万円から200万円程度」を見てください。費用に幅があるのは、断熱は工法だけで金額が決まらないことが理由です。利用する断熱材によって費用が変わります。
付加断熱のメリット&デメリット10選
付加断熱のメリットとデメリット5選ずつ、合計10選は次のとおりです。
メリット5選
- 断熱性能が高い
- コストパフォーマンスに優れた工法
- 高い気密性が確保できる
- 結露が起きにくい
- ランニングコストが抑えられる
デメリット5選
- 施工技術が必要
- 施工業者選びが大変
- 利用する断熱材にも注意が必要
- 利用する外壁材にも注意が必要
- 充填断熱工法よりも費用は高額になる
順番に解説をしていきます。
メリット①断熱性能が高い
「付加断熱」は、「外張り断熱工法」のメリットである熱損失を防ぐ技術が備わっています。
室内の暖かさが失われるのは、寒い外に熱が伝わることで損なわれる熱伝導が原因です。室内の暖かさを保つためには熱伝導による熱損失を防がなければいけません。「外張り断熱」は断熱材が途切れない工法です。熱損失を防ぎ、室内の暖かさを守るように包み込ます。
また、「充填断熱」による断熱も期待できるのが「付加断熱」のメリットです。「外張り断熱」が熱伝導を防ぎ、さらに「充填断熱」による断熱効果も期待ができます。
充填断熱のデメリットは隙間ができやすいこと、柱などの構造躯体に施工ができないのでムラができ熱損失が起きます。しかし一定の断熱性能は有している工法です。全体を外張り断熱で包み、内側を充填断熱が守ります。断熱性能が上がるのは当然です。
メリット②コストパフォーマンスに優れた工法
「付加断熱」はコストパフォーマンスに優れた工法です。先ほど費用を説明しましたが、金額以上のパフォーマンスが期待できます。
3つの断熱を費用が高い順に並べました。
- 外張り断熱工法:高額
- 付加断熱:中間
- 充填断熱工法:低額
「外張り断熱」が一番高額になる工法です。
「両方の施工をする付加断熱が一番高くなるのでは?」と思われるかもしれませんが、「外張り断熱」を完璧に施工した後「充填断熱」をプラスするわけではありません。「充填断熱」の性能で十分な箇所は任せることができます。よって「外張り断熱工法」より安くなるのです。
次は断熱性能が高い順に並べます。
- 付加断熱:高い
- 外張り断熱工法:中間
- 充填断熱工法:低い
「外張り断熱工法」も断熱性能は高く十分に満足できる工法です。
ただ、「付加断熱」に比べると採用する断熱材にもよりますが性能が落ちるかもしれません。つまり「付加断熱」は、価格が抑えられているにも関わらず高断熱性能が期待できる工法だということがわかります。
コストパフォーマンスに優れていることから、多くのハウスメーカーが「付加断熱」に注目しました。「付加断熱は」、施工主にとってありがたい工法です。
メリット③高い気密性が確保できる
「付加断熱」は、高い気密性が確保できます。「外張り断熱」は、外壁の気密化が容易なことから、気密性が高くなるメリットを持っています。「付加断熱」は、「外張り断熱」が持つメリットをそのまま有している工法です。気密性が高くなることで、次のメリットが生まれます。
- 空気がたまるので少しの暖房で暖まりやすい
- 隙間がないため家中の温度差を小さくできる
- 遮音性が高くなる
家中の温度差が保てれば、ヒートショックの予防につながります。ヒートショックは、急激な温度差で血圧が大きく変動し身体に悪影響を及ぼすおそろしい現象です。住まいの温度差をできるだけなくすことで、予防につながります。気密性は健康面にも影響を及ぼすのです。
また、気密性が高まれば、遮音性にも影響がでます。道路のそばに家を建てるなど、外部の音が気になる人は「付加断熱」がおすすめです。すっぽりと包み込む工法なので、遮音性が向上します。
気密性が高まるのはメリットです。住む人の健康や音の問題をなくしてくれます。
メリット④結露が起きにくい
「付加断熱」は、住まいの天敵である結露が起きにくいメリットを持っています。結露が起きにくいので、カビの発生の抑制にもなるのです。住まいの耐久性も向上します。これも「外張り断熱」によるメリットです。
また「付加断熱」は、いろいろな断熱材が選択できます。結露に強い断熱材を採用することで、結露発生を抑えることができるのです。壁内結露は、住まいに次のような悪影響を及ぼします。
- 柱や土台に水滴が付くことで腐らせる
- 腐ることで耐震性が損なわれる
- 断熱材にカビが発生し健康被害を及ぼす
- 湿気により断熱材が重くなりズレが生じ断熱性能が下がる
カビが発生することで、子どもの喘息につながるかもしれません。カビが酷い家から引っ越しをしたら、子どもの喘息が良くなったという事実もあります。注文住宅を建てるときは結露対策が必要です。湿気により、断熱性能が下がることもあります。
「付加断熱工法」は、結露を抑えることができる工法です。永く住めるようになるメリットを持っています。
メリット⑤ランニングコストが抑えられる
「付加断熱」は、住み始めてからのランニングコストを抑えるメリットを持っています。
「安く建てたいから充填断熱でいいや」と考えている人はいませんか?「充填断熱」でも一定の性能は保てますが、デメリットも多い工法です。結果的にランニングコストが向上することなども含め、長年住み続けると損をするかもしれません。
高気密高断熱に優れているので、少しの冷暖房で部屋中の温度が快適に保てます。つまり、毎年の電気代が安くなるのです。
「充填断熱」の方が安く注文住宅を建てられますが住まいの温度を快適にするために、冷暖房を随時使い続けなければいけません。「付加断熱」で施工した家は、寝る前に電源を切った冷房の冷えが朝まで続きます。暖房でも同じ効果が発揮されるので、明らかに冷暖房費が落とせるのです。
住み続けるだけで十分に元が取れます。ランニングコストが抑えられるのも「付加断熱」を採用するメリットです。
デメリット①施工技術が必要
「付加断熱」はメリットが多い工法ですが、非常に施工が難しいといわれています。「付加断熱はメリットも多く優れていので、採用しているハウスメーカーを選べばいい」といった単純なものでもありません。
「付加断熱」は、住まいの内側と外側から断熱を施します。施工をする人に優れた技術がなければ、今まで説明をしたメリットが失われるかもしれません。
「外張り断熱」は、複雑な形は苦手です。できれば正方形の住まいで採用をした方がよい工法、「付加断熱」にも同じことがいえます。理由は工法が難しく、優れた技術が必要だからです。施工の悪い業者で依頼をすると次のようなデメリットが生じます。
- 壁内結露が発生しやすくなる
- 断熱材がズレることで性能が失われる
- 断熱欠損が起きる
施工技術が足りないハウスメーカーに依頼をしたことで、耐久性が損なわれる不安もあるのです。見えない部分だからこそ施工業者にこだわらなければいけません。
デメリット②施工業者選びが大変
「付加断熱」は、施工業者により性能が変わります。施工業者選びは慎重にならなければいけません。
「大手を選べば安心」と思われるかもしれませんが、施工は下請けの工務店が行う大手ハウスメーカーもあります。下請けの技術が低ければ、断熱性能が残念の注文住宅が建つかもしれません。選ぶ時に注目するのは次の点です。
- 検索して口コミを確認
- ハウスメーカーの年間施工数を確認
- アフターケアや保証を確認
大手ハウスメーカーの口コミが全て良いわけではありません。
もちろん施工業者を絶賛する口コミもあるので、簡単には比較ができません。最終的には、依頼をする前に口コミを営業マンに見せ、確認するしか方法はありません。
「付加断熱は施工が難しいと聞いたが大丈夫か」と聞きます。大抵の家業マンは「問題ありません」と答えますが、集めた口コミの情報から本当に不安だということを説明しましょう。営業マンも気に留めてくれるので安心につながります。
直接施工をする工務店に依頼をする場合は、情報が集めやすいです。どこの工務店が建てるかわかっているのは安心につながります。
施工業者選びは大変ですが、デメリットを減らすためにも重要です。口だけの施工業者に当たらないよう注意をしましょう。
デメリット③利用する断熱材にも注意が必要
ハウスメーカーによっては、利用する断熱材が決まっています。断熱材によって費用と性能が変わるので注意をしましょう。
最初に「付加断熱」にはいろいろな呼び名がハウスメーカーごとにあると説明をしました。ハウスメーカーのホームページでは、自社の断熱性能が優れていることを説明しています。
ただ「ダブル断熱」「W断熱」「ハイブリッド断熱」「内外ダブル断熱」など、いろいろな情報を見て「付加断熱」は素晴らしいと判断するのは危険です。
ハウスメーカーの説明は、利用をする断熱材を含めた解説をしています。「付加断熱工法」であることは間違いありませんが、断熱材により向上する性能もあるのです。
さらに詳しく
「ハイブリッド断熱」で書かれていたメリットが、別のハウスメーカーが記載する「内外ダブル断熱」でも得られるとは限りません。いろいろなホームページを見て同じ「付加断熱工法」だから多くのメリットが得らえるなどと勘違いをしないように注意しましょう。
「付加断熱」は多くの断熱材を利用できるメリットがあります。「付加断熱」だけでなく、断熱材にも注目をするべきです。
デメリット④利用する外壁材にも注意が必要
「付加断熱」は、支持材を組んでから断熱材の充填を行います。
この支持材により熱損失が発生するかもしれません。しかし支持力を減らせば外壁材や通気層に影響がでます。支える力を確保しながら熱損失を少なくする外壁材の選択が必要です。
ハウスメーカーに依頼をするときは、外壁材の選択に関し断熱性が保たれるかも相談をしましょう。
デメリット⑤充填断熱工法よりも費用は高額になる
「付加断熱」のデメリットは、「充填断熱」よりも費用が高額になる点です。しかし、先ほども説明したとおりコストパフォーマンスに優れています。おすすめの工法です。
ただ、資金が用意できなければ利用ができません。「充填断熱」よりも費用が高額になる点はデメリットです。
まとめ
「付加断熱とは?メリット&デメリット10選と費用の話」をしました。
「付加断熱」は費用が中間にも関わらず、断熱性能が高いというメリットがあります。多くの注文住宅メーカーが「付加断熱」を採用し、住まいの性能向上に役立てているのです。
できれば、「付加断熱」を普段から採用している注文住宅メーカーを選択しましょう。施工に慣れていない業者は危険です。技術が必要なので、普段から採用をしている注文住宅メーカーを探してください。依頼をするときは、どれだけの施工経験があるかの確認が必要です。