これから注文住宅を建てる人は、住み始めてから壁内結露に悩む人が多くいる事実を知っておかなければいけません。
壁内結露は、住まいに致命的なダメージを与えることもあります。建て主である自分が、壁内結露について熟知しておかなければ痛い目を見ることもあるのです。「ハウスメーカーに依頼をするから大丈夫でしょ」と思われている人は注意をしましょう。
壁内結露は見えない場所に発生するので、住み始めてから異変に気が付きます。壁内結露に関する対策は、建てる前から始まっているのです。
そこで今回は、壁内結露の原因と対策を10つのポイントで解説します。壁内結露で悩まされないためにも原因と対策を知り、気になるところは営業マンにどんどん質問をしましょう。
目次
壁内結露の原因
壁内結露が発生する経緯は次のとおりです。
- 室内がエアコンで暖まる(夏は涼しくなる)
- 壁を挟み、室内と室外の温度差が発生する
- 水蒸気を蓄えた暖かい空気は温度が低い方へと流れる性質があるので、壁の内部にある断熱材に侵入(冬:暖かい室内から寒い室外、夏:暑い室外から涼しい室内に空気が移動)
- 空気の移動中、外壁の冷たさにより急激に空気が冷やされることで壁の内部に結露が発生(夏は内壁で冷やされる)
空気が含める水分量は温度によって異なります。温度が暖かいとたくさん含むことができ、冷たいと含むことができません。
壁内充填断熱工法(内断熱工法)の壁内を簡単に分類すると、「内壁」「断熱材」「外壁」で分けられます。壁内結露とは、それぞれの壁の断熱材側に発生した水分のことです。
さらに詳しく
断熱材側に発生するので、建てた後に外から拭き取ることができません。拭き取れない水分が断熱材や建材に良からぬ影響を与えるのが問題です。
逆に外部結露は見える場所に発生する水滴のこと、冬場の窓ガラスについた水滴などのことをいいます。外部結露は発生をしても、雑巾で拭くなどの対策ができる結露です。
壁内結露を放っておくと、住まいに大きなダメージを与えかねません。ただ、見えない場所で発生するのが問題です。建てる前から対策を講じておく必要があります。
壁内結露の対策を10つのポイントで解説
壁内結露の原因はわかりました。次は対策を確認しておきましょう。
壁内結露の対策に関する10つのポイントは次のとおりです。
- 外張り断熱を採用する
- 防湿気密シートを採用する
- 通気層を設ける
- 建材に自然素材を採用する
- 湿気に強い断熱材を採用する
- 結露を抑える壁紙を採用する
- 真面目な注文住宅メーカーに依頼する
- 除湿器を利用する
- 室内のレイアウトに注意をする
- 壁内結露を主な構造材の瑕疵に含むハウスメーカーを選ぶ
詳しく解説をしていきます。
対策①外張り断熱を採用する
壁内結露の発生がしやすい壁内充填断熱工法ではなく、外張断熱工法を採用するのがポイントです。外張り断熱は、壁や屋根などの外側を包むように断熱する工法、壁の中に断熱材を詰めないので壁内結露が発生しにくくなります。
外張断熱工法を採用することで、壁内結露が発生しにくくなる理由は次のとおりです。
- 家全体を断熱材で覆うので、壁の中も室内に近い状態になる
- 外張断熱工法は断熱性に優れているので、壁が均一の温度になる
壁内結露を抑えるのならば、外張断熱工法を採用するべきです。ただ、とても魅力的に見えますが主に次のデメリットもあるので注意をしましょう。
デメリット
- 複雑な間取りには向かない
- 難しい工法なので技術の高い施工業者への依頼が必要になる
- 外張断熱工法を採用すると費用が高くなる
土地の状況により家の形が複雑になると、外張断熱工法の採用が難しくなります。また、熟練された高い技術を有した職人が施工をしないと、断熱性にムラができ性能を落とすかもしれません。費用に関しても、壁内充填断熱工法の倍以上高くなる可能性がある工法です。
壁内結露の対策としては魅力的ですが、費用面のデメリットが気になります。壁内結露の発生を最小限できますが、十分な検討が必要です。
対策②防湿気密シートを採用する
壁内結露対策には、防湿気密シートの採用もポイントです。防湿気密シートは湿度を遮断し、気密性を向上させます。壁の中に張られた防湿気密シートが壁内結露を防ぐ方法です。しかし優れたシートであることは間違いないのですが、次の点に注意をしなければいけません。
注意
- 隙間なく施工するだけの技術が必要
- 寸分でも隙間があると、そこから壁内結露が発生する
- 万が一壁内結露が発生すると、逆に防湿気密シートに守られることになり外へ逃げない
少しでも隙間ができると、防湿気密シートがない状態よりも深刻な問題になりかねない方法です。結露があまりにも酷いので壁を開けてみたら、防湿気密シートに水滴がたまっていたという例もあります。
注意
「壁一面に防湿気密シートを張るだけならばミスはないでしょ」と思われるかもしれませんが、壁内には電気線や換気扇などがあるので、一面を簡単に覆われるわけではありません。
隙間が発生する可能性は非常に高いです。また住み始めてから壁に釘などを刺すことで、防湿気密シートに穴が開くこともあります。施工が完全でも、知らぬ間に穴を開けていることもあるのです。
防湿気密シートは、壁内結露対策に強い効果がありますが、欠点も目立ちます。採用をする場合は施工業者と十分に相談をしましょう。
対策③通気層を設ける
通気層とは、外気が通り抜けられるように設置した断熱材の外側にある空間のことです。
壁内結露の原因である湿気を通気層から排出します。通気層は、水滴ができないうちに排出するのがポイントです。先ほどの防湿気密シートと合わせることで、壁内結露対策がより強化されます。
通気層は下から侵入した空気が上に流れるとき、一緒に湿気を逃がす方法です。つまり、入り口と出口の2つが必要になります。まれに、知らぬ間にどちらかの出入り口をふさぐような失敗をする施工業者もあるので注意をしましょう。
注意
気密性を損なわないためにも、隙間を作ってはいけないと思いこみ、天井側の出口を塞ぐミスが発生しています。また、通気層の出入り口に十分な広さを確保しなかったために、役目が足りないケースもあるようです。
住まいが完成すると確認が難しい場所なので、施工中も建て主が気に掛けるようにしましょう。
対策④建材に自然素材を採用する
自然素材は結露に強い建材です。本物の自然素材を活用すると、優れた調湿で湿気を吸い込む特徴があります。乾燥が酷くなる時期には吐き出すので、心地よい室内になることで有名です。
調湿効果の高い自然素材の代表は「無垢材」や「珪藻土」、快適な湿度を維持してくれます。さらに断熱性や保温性も高く、自然素材の香りも最高です。無垢材の発する香りは人に癒しを与えてくれます。
ただ少々価格が高くなるので注意をしましょう。しかし価格以上のメリットを自然素材は持っています。結露の原因をなすくすのではなく、優れた調湿効果で抑えるのがポイントです。
対策⑤湿気に強い断熱材を採用する
断熱材選びも壁内結露対策に必要なポイントです。結露に強いと言われている断熱材を採用しましょう。主な断熱材は次の2つです。
- 木質繊維系断熱材のセルロースファイバー
- 発泡プラスチック系断熱材のポリスチレンフォーム
セルロースファイバー
主な原料は「新聞や段ボールなどの古紙」や「おがくず」などです。自然素材が原料なので、体に優しく調湿性に優れています。結露の他にも耐火性や防音性などにも効果があるなど、基本性能の高さが特徴です。ただし、費用が高くなるので注意をしましょう。
ポリスチレンフォーム
素材は「発泡スチロール」と同じです。水を吸わないので壁内結露対策に最適、価格も抑えられます。ただし熱に弱いといったデメリットもあるので注意をしましょう。
打ち合わせのときに、どの断熱材を利用しているのか確認をとることが大切です。できれば「セルロースファイバー」か「ポリスチレンフォーム」を利用しているハウスメーカーに依頼をしましょう。
対策⑥結露を抑える壁紙を採用する
壁紙も結露を抑える素材を利用するのがポイントです。主な調湿タイプの壁紙を紹介します。
- 吸放湿壁紙:吸水性ポリマーが湿気を吸収
- 通気性壁紙:細かい空気の通り道により湿気を逃がします。
- 珪藻土壁紙:調湿性に優れた自然素材
防湿気密シートや通気層と合わせることで、より強力な効果が期待できる対策です。カビの発生を抑制するので、快適な室内が実現できます。
対策⑦真面目な注文住宅メーカーに依頼する
真面目な注文住宅メーカーに依頼をすることで、壁内結露の原因を排除します。壁内結露の対策はいくつもありますが、本当に対策どおりの施工をされたかの確認は難しいです。素人目では簡単にわかりません。
先ほども説明しましたが、図面には通気層があるのに、出入り口を塞ぐといったミスも発生しています。ではどのような時にミスが発生するのでしょうか。
- ハウスメーカーが、下請け施工業者に「工期期間を短くしろ」と無理を言ったため、確認を怠った
- 新人が携わった場所の点検体制が十分ではない
- 住まいの外観のみキレイに仕上げる
注文住宅は、手を抜こうと思えば作業工程を飛ばすことなど簡単です。施工業者の中には「効率化」と話す人もいますが、効率化と手抜きは違います。区別がついていない施工業者もいるようです。
注文住宅を建てるときは、施工業者の口コミを確認しましょう。「住み始めたら結露がひどい」というような口コミがある注文住宅メーカーは要注意です。
対策⑧除湿器を利用する
壁内結露の原因をなくすため、室内では除湿器を利用するのもポイントです。今までは、建てる前の対策でしたが、ここからは住み始めてからの対策を紹介します。主な対策は次のとおりです。
- リビングや寝室など部屋ごとに除湿器を設置する
- 洗濯物は室内干しをしない
- 室内干しをする場合は換気をする
- 24時間換気は必ず動かし、こまめに清掃をする
- エアコンの温度を極端に高くしない
湿気が気になるシーズンは、できるだけ除湿器を利用しましょう。壁内結露対策は、住み始めてからもできます。湿気の原因を抑えるのがポイントです。
対策⑨室内のレイアウトに注意をする
壁内結露対策を考えた室内のレイアウトもポイントです。引っ越しのとき、家具の裏が湿気によりカビまみれになっている状況を見たことはありませんか?空気の通り道を作らないと、家具もダメになります。
対策として次の点に注意をしてください。
注意
- 家具は連続して並べない
- 家具を置くときは壁から数センチ間をあける
- 押し入れにしまう布団もこまめに乾燥させる
暖かい風が行き止まることで、結露が発生します。壁から数センチ離すだけでも十分な対策です。
また、押し入れに普段使わないお客様用の布団をしまう場合も注意をしましょう。通気性がないため、結露が発生しているかもしれません。スノコを利用して通気性を良くするなどの対策が必要です。
レイアウトを注意することで壁内結露を原因から防ぎます。風の通り道を考えたレイアウトを検討しましょう。壁との隙間は必要です。
対策⑩壁内結露を主な構造材の瑕疵に含むハウスメーカーを選ぶ
壁内結露を主な構造材の瑕疵に含むハウスメーカーを選ぶのもポイントです。「住宅の品質確保促進法」により主な構造材の瑕疵については、施工者の責任で10年間は補修する義務を定めています。
ただし、結露は保険対象外にしているハウスメーカーがほとんどです。壁内結露の発生原因が建物の構造上なのか、住み方に問題があるかの特定が難しく、瑕疵に問えないことが多々あります。言い争いに発展しても、まず施工業者は納得をしません。
しかし元から、壁内結露を主な構造材の瑕疵に含むハウスメーカーもあります。保険が適用になるということは、それだけ施工に自信があることの現れではないでしょうか。
ハウスメーカーと打ち合わせをするときは、「主な構造材の瑕疵に壁内結露が含むのか」を確認することがポイントです。含まない施工業者を利用するときは、慎重に対策について確認をしましょう。
まとめ
壁内結露の原因と対策を10つのポイントで解説しました。
壁内結露が進行をすると手遅れになることもあります。あまりに壁内結露が酷くなると壁に濡れたようなシミがみられ、室内がカビ臭くなることもあるようです。健康被害も発生し、耐久性を損ないます。
壁内にたまった水滴が、コンセント付近に流れ込むこともあるようです。漏電により火災に発展するかもしれません。
壁内結露は、建てる前と建てたあとの対策が必要です。信頼できる施工業者を選ぶことで、安心して暮らせる注文住宅を建てるようにしましょう。